SDGs Design
International Awards 2023
本アワードも今年で5 回目の開催を迎え、今回は、「未来の子育て」をデザインしよう!をテーマとして設定しました。未来の担い手である世界中の子どもたちが平和で健やかに学び育っていくために、また子どもたちを囲む人々のために、様々な視点でのサポートや改革を目指すためのデザインアイデアを募集した結果、17 の国と地域より、202件のアイデアが寄せられました。
募集テーマ
「未来の子育て」を
デザインしよう!
子どもは未来の担い手。
子どものためのデザインは私たちの未来に繋がる。
「未来の子育て」を
デザインしよう!
未来の担い手である子どもたちが、平和で健やかに学び育っていくためには様々な視点でのサポートや改革が必要です。世界中の子どもや、子どもたちを囲む人々のためにどのようなことができるでしょうか。以下のキーワードを参考に広くアイデアを募集します。
子どもと医療
医療、保険、福祉サービスの仕組みなど
子どもと教育
教育システム、環境、ツール、遊び場、遊具、おもちゃなど
子どもと多様な家族
シングル家庭の支援、多様な家族の子そだてなど
子どもと文化
外国人の子どもの支援、文化交流など
子どもと自然災害
自然災害時のサポートなど
いじめ、家庭暴力のない社会
いじめや家庭暴力のない社会をつくるためのサポートなど
企業とともに「未来の子育て」を
デザインしよう!
社会課題の解決は1人だけでは実現できません。企業や地域との連携も重要です。各企業も一緒になって子育てをしていくためにはどのようなことができるでしょうか。イベント、ツール、アプリ、システム、施設のデザインやアートなど様々なアイデアを募集します。
-
KM
バイオロジクス賞世界中の人々のウェルビーングに向けて、
ワクチン接種の重要性を認識してもらうためのアイデア世界中の人びとが、ワクチンの重要性(意義や役割)の理解を深めるためにはどのようにすればよいでしょうか。
例えば、VPD(ワクチンで防げる病気)のことを知りたくなるアイデアや、親子でワクチンについて正しい情報を学ぶためのアイデアなどをお待ちしています。ワクチンを受けてよかったと理解できる絵本などのツールやアプリ、人の行動を促す仕組みなどどんなかたちでも構いません。 -
ユーコーラッキーグループ賞
「結婚している人も、しない人も、
子どもがいる人も、いない人も
笑顔で元気に子どもを育てていくためのアイデア」未来を担う子どもたちは、家族だけで育てていくものではありません。
家族も、地域の人も、そして家族が働く企業も、みんなが助け合い、楽しく子育てに関わっていくためにはどのように取り組んでいけばよいでしょうか。例えば…
- ・産休や子育ての時期に、子どもがほしくてもいない人、自分の子どもがほしいとは思ってない人など、子どもがいない人にだけしわ寄せがおこることなく仕事をシェアできる会社の制度のアイデア
- ・子供が生まれる前から育つまで企業や職場が子育てのサポートするシステムのアイデア
- ・子育てに関わる物を、会社や職場で経済的にも環境的にもエコに活用できるアイデア(シェアリングやリユースetc.)
- ・子育てを疑似体験できるイベントの企画やツールのアイデア
- ・地域と企業が一緒に子育てサポートをするアイデア
など企業が未来を担う子どもたちを育てるためにできる仕組みや新しいアイデアを幅広く募集します。
賞
「未来の子育て」をデザインしよう!
-
金賞 1組 30万円 +賞状
-
銀賞 1組 10万円 +賞状
-
銅賞 1組 5万円 +賞状
本アワードは、韓国東西大学と共同運営のため、賞金は日本円相当の韓国ウォンで振り込まれます。
企業とともに「未来の子育て」を
デザインしよう!
SDGs Design International Awardsの趣旨にご賛同頂き、SDGsに積極的な企業様から企業賞をご提供。応募された作品から、特に魅力的と感じる作品を選定いただきます。
高校生特別賞
高校生の優れた応募デザイン提案に高校生特別賞が授与されます。
審査員
-
[ 審査員長 ]
Juyoung Chang
韓国東西大学
アジア未来デザイン
研究所
所長、教授 -
[ 審査員 ]
Melanie Sarantou
九州大学大学院
芸術工学研究院
教授 -
[ 審査員 ]
谷 正和
九州大学大学院
芸術工学研究院
名誉教授 -
[ 審査員 ]
Soogil Oh
高麗サイバー大学
情報管理・セキュリティ学部
教授 -
[ 審査員 ]
Jangsub Lee
韓国
ソウル大学 准教授Design In Social & Circular Objectives
研究室長ソーシャルデザインクラブ「Sunshine」
ディレクター
金賞
BLOCK&MEMORY: Orientation walking ability training AIDS designed for visually impaired children
ブロックと記憶:視覚障がい児のための
オリエンテーション
歩行能力トレーニング支援
HONGXU LUO, HAN JIAYI, and CHU XINRUI
(大連理工大学 中国)
現在、視覚障害を持つ子どもたちの教育は各家庭の方針に依存したものとなっており、子どもたちの総合的なパフォーマンスをサポートする科学的な情報が十分に行き渡っていないのが現状です。「BLOCK and MEMORY」は、視覚障害を持つ子どもが空間感覚や方向感覚を理解し、成長とともにより器用に自ら世界をナビゲートできるように補助していく学習教材です。
「BLOCK and MEMORY」は、①組み立て式の触地図と②保護者用のスマートフォンアプリケーションの二つによって構成されています。触地図は、正確な距離よりも、折り返し地点のような質的な情報に子どもの注意を向けるようデザインされています。また、異なる触覚面を持つ多様なブロックを通して、子どもに情報を伝達できるようになっています。例えば、Ordinary Cubeのブロックは出発地点を、Reference Cube のブロック木のような現実の物体を、Special Cubeは階段の有無や道のレベルの変化を表すのに使えるようになっています。さらに、自分が進む方向を示すことができるクリッカーとブロックを組み合わせることも可能です。保護者はアプリケーションを用いて触地図上での子どものパフォーマンスを把握することができます。
アプリケーションを活用することで、独自のトレーニングルートを組み立てることも可能です。保護者は実際のルートで遭遇するまちの音を記録し、その情報を用いて触地図上にプロトタイプルートを作成できます。子どもはこれを用いてルートをたどる練習をすることができます。「BLOCK and MEMORY」は視覚に障害を持つ子どもが環境をナビゲートする際に必要となる感覚を育て、保護者・子ども双方の自信を養います。このような学習補助教材は、子どもの学びの質を高め、特別な配慮を必要とする子どもたちへの教育の新たなアプローチとなるでしょう。
銀賞
Pieces of Peace
平和のかけら
Hao Cao, and Masao Oi
(東京大学 日本)
世界には、平和を経験したことがない地域が存在する一方で、より恵まれた地域もあります。後者の地域の子どもたちにとって、「平和」と「戦争」の概念のつながりは見えづらく、自国の政治的・社会的状況を過少評価してしまいやすくなっています。「Pieces of Peace」は、戦争のない世界で生きる子どもたちが平和の価値を探求できるようサポートする教育ツールです。戦争にまつわる知識を吸収することにとどまらず、手を動かして学ぶことや自らの経験や考えを振り返ることを促し、生徒の成長をサポートします。
今回は、護送を待つ難民の家族や瓦礫の中を歩く子どもなど、さまざまな時代や地域の戦時中の写真を使用しました。子どもたちはこれらの写真を自由にイメージを再構築するための素材として使用しました。戦争中に働いている子どもの写真の断片を、遊んでいる子ども、勉強している子ども、食事をしている子どもに変えることができます。子どもたちや作品を見る人は、戦時中の写真とは対照的な日常の尊さに気づくことができるだろう。また、子どもたちの無垢な視点を通して様々なものの見方ができるようになることも、このデザインの順応性の高さの象徴です。
「Pieces of Peace」の影響は現在にとどまりません。子どもたちの平和の精神を育み、子どもたちの未来の軌跡を形づくり、世界を明るい道へと導いてくれることが期待できます。この作品は、デザインの手法を社会問題と結びつけることで、デザインの力で他の世界的な問題を解決する方法についての示唆を与えてくれます。
- 講評
- 審査員谷正和
この作品は現代の子供たちが戦争を自らの生活に結びつけて考えることを助ける教育ツールの提案です。日本をはじめ多くの国では戦争が遠い過去の出来事となりつつあり、戦争を自分事として感じる機会が少なくなっている中で、ウクライナやパレスティナなどで激しい戦争が続いている現実があります。そのため、すべての人が戦争について考えることがますます重要になっていますが、地道な平和教育が戦争経験者の減少とともに先細りしている状況です。この提案はそのような現代的な社会問題に対して、真正面から取り組もうとしている点が高く評価され、銀賞を受賞しました。
- 講評
- 審査員Soogil OH
持続可能な開発という概念は、環境問題の解決策の模索の中から生まれました。1983年に国連環境開発委員会の委員長を務めたグロ・ハーレム・ブルントラントは、貧困、飢餓、食糧、人権といった問題が解決されない限り、環境問題の解決は難しいと認識し、その貧困、飢餓、人権の解決が難しいのは、戦争や兵器があるからだと強調しています。戦争にまつわる写真の断片を通して平和の価値を再認識させようとするこの作品は、持続可能な開発という概念への優れた理解を示すだけでなく、戦争のさまざまな側面を考察することで、持続可能な開発が人類普遍の価値としていかに貴重で緊急なものであるかを気づかせてくれます。この提案でデザイナーたちは「everyday life equals peace(日常=平和)」と伝えます。戦争を経験した世代はその痛みを強調する一方で、その傷跡から前に進めていなかったり、十分な説明が尽くされていないことがあります。これはともすると戦争を未来の世代に先送りにしているとも言えます。次世代の平和教育ツールに向けたこの提案は、複雑で解決困難な社会問題の解決を真剣に考える世代を育てながら、平和を守る取り組みを促進する一助となるでしょう。
銅賞
Cosmic Education - for the past, present and future.
宇宙教育 - 過去、現在、未来のために
Shruti Umesh Chakke
(IED ヨーロッパ・デザイン学院トリノ, イタリア)
「Cosmic Education」は従来の教育に対する画期的なアプローチを提案しています。多様で包括的な教育方法を用いることで、子どもたちのニーズや成長を妨げる可能性のある画一的な教育方法に挑みます。「Cosmic Education」は、従来の教育科目の枠を超えたところに人生が広がっているという気づきを子どもたちに与えることを目的としています。「Cosmic Toolkit」(この教育アプローチの方法をまとめたガイド)と組み合わせることで、生徒、保護者、教育者全員が協力して子どもたちの教育において能動的な役割を果たすことを学ぶことができます。「Cosmic Education」では、学習はもはや教室という環境に限定されるものではなく、子どもたちは年齢で分けられることもなく、成長の旅路はもはや一人で歩むものではなくなります。
「Cosmic Education」は、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の主要なポイントである、自己成長、環境認識、そして文化の理解を重視しています。現在の教育はクリエイティビティよりも暗記力を重視する非常に硬直的なものとなっており、子どもたち一人ひとりのニーズに適応していません。 「Cosmic Education」は、新しい学習形態、学際的なアプローチ、コミュニティへの関わり、親や教育者の積極的な参加、子ども一人一人の意識の芽生えをサポートし、促します。また、過去、現在、未来の架け橋となるため、急速に変化する世の中において子供たちが備えるべきものを考慮に入れています。
この新しい学習法はインドのラダックで実施され、世界中の他の教育環境でも適応できる可能性を示しています。「Cosmic Education」のアプローチは、異なる文化や地域にも適用することができ、生徒を精神的にだけでなく、文化的にも成長させることができるのです。 「Cosmic Education」が国際的に実施されることで、未来により良い影響を与える新しい世代の生徒たちが生まれることが期待されます。
- 講評
- 審査員谷正和
Cosmic Educationは、従来の教育モデルに挑戦し、学習者に対して深い理解と世界観を提供するという革新的な目標を掲げています。この提案では、新しい教育実践として、Cosmic toolkitを中心とする教育イノベーションによって、自然をベースとした授業とともに、実践的な環境や実践的な学習に取り組むワークショップが融合されており、環境への敬意と深い理解、創造性、批判的思考をはぐくむことを目的とした包括的なプログラムとなっています。説明動画の仕上がりの質も選考委員会で非常に高く評価され、銅賞を受賞しました。
- 講評
- 審査員Jangsub LEE
この素晴らしい賞を審査する機会をいただき、ありがとうございました。Cosmic Educationは、多くの素晴らしい応募作品の中で最も印象的でした。私たちは皆、教育のあり方を変える必要があることは理解していますが、現実的な代替案を提示するのは難しいものです。Cosmic Educationは、自然とのつながりや人と人とのコミュニティマインドに新たな解決策を見出している作品です。これは、私たちが忘れてしまった原始的な人間の価値観への回帰であり、同時に、私たちに欠けている最も未来的で教育的な価値とも言えます。多くのオルタナティブ教育がテクノロジーから遠ざかったり、伝統的な価値観に固執したりする傾向がある中、Cosmic Educationは新しいテクノロジーを積極的に受け入れます。この発想の柔軟性は、持続可能性を実現する上で重要なポイントだと思います。このような素晴らしい賞を受賞したCosmic Educationにお祝いを申し上げるとともに、これを励みに、彼らがもっと勇気を持って自分たちのプロジェクトを世界に発信してくれることを願っています。
KMバイオロジクス賞
The Brave Adventure of 'Vaccine'
『ワクチン』の勇敢な冒険
Shuma Kihara, and Wang jia
(九州大学 日本)
予防接種の重要性を伝えたいというKM Biologicの思いに応え、主人公の「ワクチン」が悪役の「ウイルス博士」と戦うマンガ「The Brave Adventure of Vaccine」の制作を提案します。主人公のほか、「インフルエンザ・ファイター」「ジフテリア・ディフェンダー」「肺炎・プロテクター」といった脇役も登場し、世界を健康に保つために「Dr.ウイルス」の子分たちと戦います。物語の登場人物たちは、現在存在する病気やウイルスから私たちを守るための、実際の予防接種を象徴しており、ヒーローも悪役も様々な能力を持っており、ワクチンが私たちの体に与える影響を読者に教えてくれます。
予防接種を受けることのメリットは明らかであるにもかかわらず、多くの人が接種しないことを選択しているのが現状です。小児や乳幼児に推奨されているワクチンもありますが、幼い子どもたちには接種の重要性を理解するのは難しいでしょう。子どもは予防接種を受けることを選択できないため、この重要な決定を下すのは親になります。医学用語の使用によって興味を失われてしまうことなく、正しい情報を通して予防接種の必要性が伝わるような工夫が必要です。「The Brave Adventure of Vaccine」は、あらゆる年齢の人々に、楽しく、分かりやすく、有益な知識を伝えるためのデザイン提案です。
このマンガは学校や病院、その他の公共施設で配布され、予防接種に関する統一された情報を作り出すために用いられることが想定されます。カラフルな絵柄は、読者の関心をストーリーに引きつけながら、ワクチンに対する恐怖心や否定的な感情を払拭する効果を期待できます。ワクチンの仕組みを理解すれば、人々はより予防接種を受けるようになるはずです。ウイルスが流行している昨今、「The Brave Adventure of Vaccine」は世界をより安全で健康的な場所にすることができます。
- 講評
- 経営企画部
広報課長
藤田洋一
(フジタヨウイチ)
今回の受賞作品は、感染症やワクチンをキャラクターに見立てた着眼点が面白く、大人も子どもも興味を持って楽しくわかりやすく学ぶことができる点が素晴らしいアイデアだと感じました。また、制作した漫画を自治体や学校などに配布するという活用方法も実現可能性が高く、効果的な手段になり得ることが評価のポイントとなりました。また、弊社が小学校などで行っている感染症予防に関する出前授業との親和性も高く、多くの人にワクチンで防げる病気のことを広く知ってもらう作品だと感じ高く評価いたしました。
ユーコーラッキーグループ賞
Let`s Protect the Shining Stars
輝く星を守ろう
Jessica Andrade dos Santos, and Jose Aceituno
(九州大学 日本)
「Let’s Protect the Shining Stars」は、子どもがいる社員・いない社員の両者をサポートするアイデアを求めるユーコーラッキーグループのニーズに応えるデザイン提案です。本提案では、「子どもへの直接的なメリット」「保護者の負担軽減」「子どものいない個人を巻き込んだ子ども支援」の3点に着目した「Yuko Star アプリ」を紹介します。
「Yuko Star アプリ」は、「教育アクティビティ」と「日常的タスクのリダイレクション」という2つの大きな特徴を備えたアプリとなっています。教育アクティビティ機能では、社内の保護者以外が美術館見学や映画鑑賞、スポーツなどのイベントを企画できるようになっています。これにより、保護者以外も積極的に子どもたちをサポートする機会を提供し、子どもたちは楽しみながら学ぶことができ、保護者がアクティビティを計画する負担を軽減することができます。また、これらのイベントはアプリ上に表示されるため、保護者は前もってスケジュールをたて、子どもと充実した時間を過ごすことができます。
「日常的タスクのリダイレクション」機能では、子どものいる社員が買い物、家庭教師、料理など、手助けが必要なタスクをアプリに投稿できるようになっています。子どものいない社員は、手伝いたいタスクを選択し、完了したタスクごとにポイントを獲得し、クーポンや割引と交換することができます。
多くの親が家庭と仕事の両立に悩まされている中、「Let’s Protect the Shining Stars」はワークライフバランスを実現する手段を提供します。「Yuko Star アプリ」は、社員同士で互いに支え合うことができるようにするだけでなく、間接的に子どもたちをサポートすることにも貢献し、かけがえのないスターたちの明るい未来を創造します。
- 講評
- YUKO GROUP
統括本部
営業戦略課
井上志穂子
ジェシカさん、ホセさんこのたびは受賞おめでとうございます。
未来を担う子どもたちの成長には、家族が働く企業の関わりも重要になってきます。「職場のみんなが笑顔で子育てに関わるには」、その思いから企業賞の課題テーマとさせていただきました。
今回の受賞作品では「子どものいないスタッフの子育てへの参加」という点にスポットをあてたところを最も評価しました。子どもたちの直接的なメリット、保護者の負担軽減、子どものいない人へのメリットと、3つの視点からアプローチしており、共感性が高い作品といえます。
多くの企業の手助けをできるアイデアとなり得るので、今後、より深堀していただくことを期待しております。
高校生特別賞
Bottle Evo: Unleashing Creativity One Bottle at a Time
ボトル・エヴォ:
ボトル1本ずつに創造性を解き放つ
Raexle Althea Fernando, Joaquin Izak Salvador, Charles Benedict Alcantara,
Chezka Patricia Dolores, Gift Eirell Banut, Leanne Jazmine Guillermo
(マリアーノマルコス州立大学付属高校, フィリピン)
「Bottle Evo」は、フィリピンの主要な河川水系におけるプラスチック汚染問題に対処するためにデザインされたアプリケーションです。ユーザーは、「Bottle Evo」アプリでアップサイクルしたいペットボトルの写真を撮ることで、そのペットボトルで作れる様々なものの提案を、チュートリアル付きで受け取ることができます。Arエクスペリエンス・エンハンサーは、ユーザーが選んだ場所で最終プロダクトがどのように見えるかを視覚化するのに 役立ちます。ユーザーは完成した作品の写真をアプリのフォーラムにアップロードし、ポイントを受け取ることが可能。ユーザーが興味を持ちそうな作品を通知する「おすすめ」や「いいね」機能を備えているのも特徴です。
「Bottle Evo」は子どもたちやあらゆる年齢の利用者の創造性を後押しすると同時に、SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」に沿った、安全できれいな水の未来を保障する一翼を担うことができます。また、ゴミ分別の重要性やペットボトルゴミが環境に与える影響についての子どもたちの意識を高めることにも貢献します。若い世代がフィリピンにおけるリサイクルの重要性に気づくことができれば、より持続可能なインフラを整備し、よりクリーンな未来を作ることができるでしょう。アプリ内のコミュニティ・フォーラムは、ユーザー間の協力と学習を促進することが期待されます。
講評
本作品は、ごみとして廃棄されるペットボトルに注目したプログラムだ。第一にDIY愛好家の創作するモチベーションとインセンティブを獲得することをアップサイクルのドライバーとするアイデアを評価したい。また、参加者相互が多種多様なアイデアを「シェアする」行動を作り出すシステムの提案も盛り込まれていることも大切なポイントと考えた。本作品が実現し、ペットボトルの再利用する未来の実現に期待したい。
G for Greenery and Geological Disasters
緑と地質災害のG
Jamilla Casie Mei Orbeta, Zakia Mei Coloma, Keshia Colleen Gaño, Odessa Padron, Carleone Bruce Salvador, Rayner Johann Ramiro
(マリアーノマルコス州立大学付属高校, フィリピン)
「G」プロジェクトは、フィリピンの根強い洪水災害に対処することを目的としたプロジェクトです。G-droneとG-friendアプリケーションの2つの要素によって構成されています。G-drone は5000mの航続距離を持ち、洪水を引き起こす可能性のあるゴミの堆積を検知するために政府や地元当局が使用することが想定されています。ゴミの写真は地域ごとに収集され、潜在的な危険性を分析し、G-friendにアップロードされます。コミュニティ・ワーカーやボランティアは、これらの通知を受けて、ゴミのある場所を訪れ、ゴミの撤去を行うことが可能に。また、ユーザーがボランティアを行うと、G-friend上でポイントを獲得することができ、ポイントは電子マネーやバウチャーと交換することができます。G-friendには、天気や災害に関する注意事項を知らせるページも搭載。更に、「plant-a-tree 」機能では、木を植えることでポイントを獲得することができ、ユーザーに緑の大切さを伝えます。
「G」プロジェクトは、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」に沿ったもので、防災の手法を通じて災害リスクを抑えながら、コミュニティを安全で持続可能なものにします。コミュニティを醸成する仕組みになっており、子どもたちも幼いうちから地域に対する関心を深めることができます。また、景観の理由だけでなく、衛生面や安全面からも、清潔な環境を維持することの重要性の理解も推進します。
講評
本作品は、自然災害に対するデザイン提案で、災害時のみではなく、災害の発生前、発生中、発生後の一連の仕組みを提案して、非常に社会価値の高い提案である。また、G-DRONEとG―FRIENDのアプリの連携で、政策から個人の使用まで配慮し、環境作りとコミュニティーづくりに素晴らしい仕組みを評価する。高校生として、非常にクオリティの高い作品となっている。ぜひ今後もこのような素晴らしいSDGsのアイデアを提案して欲しい。
Kulto’ra
クルトラ
Adrian Jed Cacao, Ynnah Therese Salenda, Rvee Anne Vanessa Cid
(マリアーノマルコス州立大学付属高校, フィリピン)
「Kulto'ra」は、子どもたちの中で自分たちの国の歴史文化が徐々に薄れつつある中、楽しく革新的な方法でフィリピンの歴史を学べるゲームアプリのデザインです。オープンワールドのゲーム設定によって、ユーザーはバビラヤン(癒し手)やラムアン(戦士)など、歴史上の重要な役割に基づいたキャラクターとなって、その地域を探検することができます。遺跡や名所に遭遇すると豆知識やトリビアを学ぶことができ、国の形成に関わる重要な出来事が見えてくるかもしれません。また、ゲームの中で工芸品を集め、自分の博物館に飾って他のプレイヤーに見てもらうことも可能です。知識を試すミニゲームに挑戦したり、プレイヤー同士で自由に交流し、コレクションを交換し合うことで、知識を深めたり広めたりできることも特徴です。
「Kulto'ra」は、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」に沿って、子どもたちが自国について学ぶための機会を提供します。また、このゲームは異なる文化地域にも適応できるため、地域の出身者だけでなく、他の地域でも意欲のある人に対して文化遺産について学ぶ場を提供することができます。「Kulto'ra」は世界中の異なる文化への共感と尊重を促すゲームとして、SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」にも対応しています。子どもたちが自分たちの文化的ルーツに価値を見出すことができれば、それを維持・保存していける可能性も高まるでしょう。
講評
文化や伝統に着目した子ども向けの教育アプリの作品で、評価ポイントは、歴史や文化について子ども楽しいゲームの形で遊びながら学習できる仕組み。また、本作品のストーリーが楽しくデザインされ、とても表現力の高い作品となっている。最後に、自分の文化理解だけではなく、誇りを持って交流できること。このような素晴らしい提案はアイデアのままで終わらせず、ぜひ実現してほしい。
このプロジェクトは、視覚障がい児の視覚認知特性を理解するための徹底的な調査から始まり、空間認知トレーニングツールを作成するためのベースを形にしました。受賞チームは調査で得られた気づきから空間認知トレーニングを補強する物理的なツールを開発した他、保護者や親がトレーニングをチェックし、積極的に子どもたちのトレーニングに関与できるスマートフォンアプリも設計しました。
この提案のデザインプロセスは理路整然と体系化されており、その結果、実用的かつ革新的なソリューションが生まれました。プロセス全体の包括的な説明は詳細かつ効果的でわかりやすく、ビデオ・プレゼンテーションも非常によく制作されていました。さらに、幼い子どもたちに対する熱い思いが伝わる提案で、一般の人たちにも子どもたちやその家族に共感してもらえるきっかけになるでしょう。そして何より、幼いうちから適切なトレーニングを行うことで、子どもたちとその家族が日常生活で感じる違和感を軽減し、成長を共にサポートできる優れたデザインだと思います。
体系的なリサーチ、革新的なアイデア、効果的な問題解決、高いデザインクオリティ、社会的包摂性、社会的インパクトなど、あらゆる面でこのコンペティションのミッションにシームレスに合致する模範的な作品と言えます。審査員の満場一致で金賞にふさわしいと判断しました。