SDGs Design
International Awards 2021
2021年10月16日、SDGs Design International Awards 2021の表彰式をオンラインにて開催いたしました。
今年度は、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする、「カーボンニュートラル」の実現に向けたデザインアイデアを募集。テーマは、「カーボンニュートラルな社会をつくろう。~Think big, Start small, Move fast~」と設定しました。
地球規模の大きな課題である本テーマに世界中の学生からたくさんの応募が寄せられました。当日は、受賞者8組による熱意のこもった、そして若い感性に溢れた素晴らしいデザイン提案が発表されました。
厳正なる審査の結果各賞が決定しました。寄せられたデザイン提案、および審査員からの講評も以下に紹介いたします。
募集テーマ
カーボンニュートラルな
社会をつくろう。
Think big, Start small, Move fast
温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向けて、世界はカウントダウンに入っています。世界各地でさまざまな挑戦が繰り広げられ、その範囲は、私たちの生活を取り巻く環境や都市、建築、プロダクト、コミュニケーション、サービス、さらには社会システムなどへと広がり、あらゆる場面でデザインが必要とされています。第3回を迎えるSDGs Design International Awardsの今年のテーマは「カーボンニュートラルな社会をつくろう。」。世界中からアイデア提案を募集します。下記2つのテーマから1つを選び応募してください。複数の応募も可能です。
Think big
カーボンニュートラルな都市を
デザインする
わたしたちは、日々さまざまな環境やシステムの中で生活しています。関連するワードをマッピングしたものが下記マップです。例えば「カーボンニュートラル x 交通(都市・インフラ)」で発想するカーボンニュートラル都市はどのようなものになるでしょう?マップをヒントにワードを付け加えたり、あらたな繋がりを見つけ出したりしながら、ミライにありたいカーボンニュートラル都市の実現に向けたアイデアを考えてください。
(1)自然との共生 (2)リソース (3)エネルギー
(4)テクノロジー (5)社会システム (6)都市・インフラ (7)モビリティ (8)産業・生産 (9)情報・コミュニケーション (10)暮らし (11)ウェルビーイング (12)食 (13)仕事
上記の①〜⑬の中からワードを選択し、デザイン提案をおこなってください。
Start small
カーボンニュートラルな
ライフスタイルをデザインする
小さいアクションの積み重ねが、ミライのカーボンニュートラルな社会をつくっていきます。あなたの身近な人にどのような提案をしたら、カーボンニュートラルに向かって意識を変えたり行動してくれるでしょうか?
日本国内の企業様及び九州大学ネガディブエミッションテクノロジー研究所より課題テーマをご提供いただきました。下記から1つ選んでアイデアを考えてください。
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トヨタ自動車九州 賞
みんなが「CO2を出したくない」と楽しく知れる・学べる
キッカケとなるUXデザイントヨタは水素を始めとする様々な環境対応車を技術開発している。ただどれだけ環境技術が日進月歩で進んだとしても、生活者のみなさまに選ばれ普及してこそ環境に貢献することだと思います。カーボンニュートラルの社会をつくることの意味を、一人一人が、知る→学ぶ→行動する、に繋げていきたい。その為には、先ずは生活者一人一人がカーボンニュートラルの社会がよいことだと、楽しく学べることが重要だと思います。そしてそれは押し付け的な教育機会ではなく、気づいたら学んでいる機会、楽しみながら学ぶ機会、であることで、持続可能な取組みになっていくと思います。この様な空間、コンテンツ、UXをデザインしてください。カーボンニュートラルな社会を実現する為に、一人一人の行動が変容する、学びのキッカケをデザインしてください。
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ピエトロ 賞
おうちで楽しく、”食”を通してできる
カーボンニュートラルのアイデア“You are what you eat. あなたは、あなたの食べたもので出来ている” という言葉をご存知でしょうか。人間が生きていく上で、カラダにもココロにも必要な「食」。食べることを大切にすること、その食を通して地球のためにできることが、皆様の世代と次の世代、さらにその先の未来に良い影響を与えることに繋がれば、すばらしいですよね。ピエトロは、昨年の創業40周年に『しあわせ、つながる』をテーマに、2030年に向けての未来ビジョンを掲げました。「お客様のしあわせ、社会のしあわせ、働く私たちのしあわせ」の実現に向けて、できることからこつこつと努力を続けることで、しあわせがつながる。若い世代の皆様からの、「おうちで楽しく、”食”を通してできるカーボンニュートラル」というテーマでの、新鮮で活気あふれる“しあわせ”なアイディアをお待ちしています。
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九州みらい建設グループ賞
循環する素材やエネルギーを活用した、
使い続けられる建築物のデザイン地域の幸せが、我々の幸せ。 地域のみらいの幸せをかたちにすることが、九州みらい建設グループの使命です。
これからの地域のみらいの幸せのためには、循環する素材やエネルギ―のを活用した、長く使い続けることのできる建築物をつくる必要があると我々は考えます。そのためのアイデアを募集します。建築物そのもののデザインに限らず、何度も使用できる素材やエネルギーの活用アイデア、建物を大事に使い続けるためのアイデアでも構いません。みなさんのアイデアを楽しみにしています! -
九州大学ネガティブエミッション
テクノロジー 賞空気をエネルギーに変えるマシーンと
その使用方法のアイデア九州大学では、極めて薄い分離膜によって、エアーフィルターのように大気から二酸化炭素(CO2)を濃縮し、そしてそれを日常生活で使用する様々な有用物質に変える装置、「Direct Air Capture and Utilization (DAC-U)システム」を創り出すことを目指しています。この新しく開発を目指すシステムは、小型で、どこにでも設置できるようなものを想定しています。日本は、資源の少ない国ですが、この装置を分散配置し、大気を源として、必要な場所で、必要量の炭素資源が創り出せれば、地産地消型の炭素循環社会(エネルギー社会)の構築にもつながります。この技術を用いて、有効で持続可能な用途のマシーンのデザインと、それをどのように使ってもらいたいかというシーンとを合わせて提案してください。
賞
全ての受賞者には賞状が贈られます。
カーボンニュートラルな都市を
デザインする
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金賞 1組 30万円
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銀賞 1組 10万円
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銅賞 1組 5万円
カーボンニュートラルな
ライフスタイルをデザインする
SDGs Design International Awardsの趣旨にご賛同頂き、SDGsに積極的な企業様から企業賞、九州大学ネガティブエミッションテクノロジー研究所より大学賞をご提供。応募された作品から、特に魅力的と感じる作品を選定いただきます。
高校生特別賞
高校生の優れた応募デザイン提案に高校生特別賞が授与されます。
審査員
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[ 審査員長 ]
池田 美奈子
九州大学大学院芸術工学研究院
准教授 -
[ 審査員 ]
藤川 茂紀 博士
九州大学カーボンニュートラル・エネルギー
国際研究所 教授九州大学ネガティブエミッションテクノロジー
研究センター センター長 -
[ 審査員 ]
松岡 恭子
株式会社スピングラス・アーキテクツ
代表取締役 -
[ 審査員 ]
Praveen Nahar
National Institute of Design (NID) 理事
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[ 審査員 ]
Andreas Schneider
情報デザイン研究所(IIDj)パートナー
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[ 審査員 ]
山崎 亮
studio-L 代表
関西学院大学建築学部 教授
コミュニティデザイナー
社会福祉士
金賞
Rejuvenating the Edge
Taorem Rahul Singha
(Bangladesh University of Engineering & Technology)
バングラデシュの首都ダッカは、世界で最も急速に成長しているメガシティのひとつで、人口は2,000万人に達しています。その発展により、炭素を蓄える能力を持つ湿地帯が浸食され続けているという問題に直面しています。湿地帯は本来、地上の植生や地下の生きた植物の下にある堆積物に炭素を蓄えることで、炭素を封じ込める素晴らしい能力を持っています。しかしながら、都市化の名のもとにおこなわれる、無計画な埋め立て、不法占拠、廃棄物の処理等で湿地帯が浸食され、劣化してきています。この状況に目を背けてきた結果、現在ダッカは、二酸化炭素排出量が増加し、居住地が侵されるだけでなく、多くの災害に対して脆弱になっています。そこで、カーボンニュートラルの実現には、一貫したデザインフレームワークで、都市構造に自然を取り戻すことが必要です。本提案では、都市のスプロール現象と湿地生態系との共存を開始することで、カーボンニュートラルな都市を実証することを目的としています。このフレームワークの最初のターゲットは、湿地帯の周辺コミュニティと考えます。本堤案により、自然資源へのガイドラインが作成され、市民全体に湿地帯の保護という意識の向上が及ぶ効果があります。それは、汚染された水を自然にろ過する湿地の保全、段階的な建築計画、農業コミュニティのための水上農業、島の生態系の保全、公共スペースとして使用できる水陸両用車、廃棄物を利用した発電、電極を備えた浮遊植物、水を利用した交通手段、家庭での食料生産を含む共生計測による手頃な住宅などのアイデアなどを含みます。この包括的なフレームワークにより、人々はそれぞれの文化や風土の中で自ら行動し、目的を達成することができます。その結果、湿地帯の都市化とそこにおける天然資源の利用を活性化させることができるのです。
銀賞
Data Center Energy Recovery Program
Nie Qijun
(Royal College of Art)
中国政府は2014年から、アリババグループと共同で、貴州省の気候と水力発電の資源を利用してデータセンターのクラスターを構築する「貴州クラウドプロジェクト」を進めています。貴州省の洞窟は、低温・高湿度・機密性の高さからサーバーを安全に保管できる場所となっており、テンセント、ファーウェイ、アップルなど多くのテクノロジー企業がデータセンターを洞窟に移設している現状があります。また、貴州省の経済構造は観光業と農業が中心である一方、教育資源は非常に乏しく、ほとんどの子供たちが高等教育を受けることができません。したがって、このプロジェクトは、地元の人々、自然生態系、データセンターの調和に取り組むことを目的としています。
データセンターでは、発電のために大量の石炭を消費していますが、その中でも最も電力を消費しているのが、サーバーを冷却するための空調です。本提案では、空調の代わりに地域に豊富にある水資源を利用してサーバーを冷却することを提案しました。また、サーバーで発生した廃熱を再利用して、貴州省が寒冷地であるため実現できなかった新しいタイプの熱帯公園を維持することができます。これにより、観光客を誘致することもでき、データセンターのガラスパネルを通して、情報がどのように機能するか、エネルギーがどのように再利用されるかなどを学ぶことができ、子どもたちの教育の場としても利用できます。
- 講評
- 審査員長池田 美奈子
世界的にデジタル化が進み、さらにCOVID-19がその傾向を加速させている現代、データセンターが急速に増加し、膨大なサーバーの放射熱を冷却するために多くのエネルギーが消費され、それが二酸化炭素の排出量に影響を与える悪循環が生じている。中国の貴州省を対象とした本提案は、こうした悪循環の解決と同時に、経済発展の遅れた地域の活性化に貢献するという複数の社会課題にアプローチする実効性のあるアイデアである。水という自然資源をサーバーの冷却に活用しながら、その廃熱を、併設するトロピカルパークの暖房に活用し、教育機会が限定された地域の子どもたちに、熱帯の気候風土が体験でき、またエネルギー循環の仕組みが学べる機会を提供する。教育機会の創出と観光資源としての可能性も示唆する優れた提案である。
銅賞
Accum. Land
Bian Yihan,Chen Lianyi,Chu Lijun and Liu Chunchen
(Royal College of Art)
我々は、持続可能でカーボンニュートラルなAccum.Landを都市部に設置することで、電子機器のリサイクルに伴う温室効果ガスの排出問題を解決するとともに、より多くの人々にその排出に関心を持ってもらうことを目指しています。ロックダウン中、人々は仕事や勉強のためにインターネットに頼るようになりました。そのため、多くの企業は社会を支えるために、より良いサービスを提供するために電子ハードウェアを次々と更新しなければなりません。つまり、ますます多くの「e-waste」が生み出されているのが現状です。しかし、中国におけるe-wasteのリサイクル率は非常に低く、不適切に直接土の中に埋められていいます。そのため、地域の土壌が広く汚染され、長期的には地元の人々の健康にも悪影響を及ぼしかねません。そのため、本提案では集積地を設計します。我々の提案では、汚染された土地をハイパーアキュムレーターの植物を植えることで最適化します。収穫された植物からは、土地に含まれるレアメタルを抽出することができ、これらの金属はリサイクルして再利用することができます。つまり、レアメタルの消費を遅らせることができるのです。集積地では、立体的な植栽を行うことで、ファイトレメディエーションの効率を高め、汚染された金属を抽出することができ、土壌の修復にも役立ちます。植物をAccum.Landのパネルとして再利用したり、フィギュアにすることもできます。さらに、シェアラボや定期的なワークショップ、アプリなどを通じて、あらゆる年齢層や地域の人々に、カーボンニュートラルなアプローチでe-wasteのリサイクルに取り組んでもらうことができるようになります。
- 講評
- 審査員長池田 美奈子
COVID-19を機に人々の生活は急速にインターネットに依存するようになり、日々進歩する技術開発によって、大量の電子機器が消費廃棄され、土壌汚染の問題とリサイクルに伴う温室効果ガスの排出が問題となっている。本提案は、植物の力を活用し、土壌の汚染物質を除去したり無害化たりすることにより、この問題の解決に挑む斬新なアイデアである。技術的な根拠を求めて、関連する研究所や研究者のもとを訪れるなど、提案の背景となる丁寧なリサーチも高く評価された。土壌汚染の問題を解決するだけでなく、植物を植えることで都市の緑地を増やして、人々の憩いの場をつくり、エネルギー効率と二酸化炭素の排出量を抑えるという好循環を生み出す点でも優れたデザインである。
トヨタ自動車九州賞
Antarctic Ecology Alerts
Cao Hao
(Tianjin Polytechnic University)
このプロジェクトは、2020年に発生した南極の氷雪藻の発生現象について、一連の調査と考察を行うものです。南極の生態環境は、人間の干渉によって不可逆的に変化しています。この変化を本プロジェクトのインスタレーションで遠く離れた場所に住む人々に提示することで、ビューアーの考え方や行動が変わることを期待しています。
ユーザーインタビューやリサーチの結果、南極の氷雪藻の発生は、ネガティブであり、不安であり、異常だというものが多いようです。ただ、きれいだと感じる人もいます。南極は遠く離れたところに位置するため、そこで起きている現象に物理的な距離があり、人々は直接関係のないことのように感じている傾向にあります。一方、北極や南極の動物たちへの悪影響は人々に深く印象付いています。
このインスタレーションでは、南極に生息する血衣藻類の現象と、それがペンギンなどの南極の動物に与えるダメージを見ることで、二酸化炭素が自然環境に与える影響を、リアルタイムにインタラクティブなアプローチで表現しています。
インスタレーションでは、touchdesignerとarduinoを使用して、ビューアーの呼吸から出る二酸化炭素をリアルタイムに反映させ、南極の空間、被害を受けた動物、人間の行動によって過剰に繁殖した血衣藻の現状を、同時にメッセージと警告をビューアーに届けることを目指しています。
- 講評
- トヨタ自動車九州株式会社
次世代事業室 室長植野 直亮 様
サステナブル&プラクティカルを重視し、人々がどうすれば行動を変えられるかという観点で、「CO2を出したくない」と、楽しく知れる・学べるキッカケ」をテーマとして掲げた。
人々が共感して行動を変えるということが、SDGsを達成する上で非常に重要になってくると考えており、そういった意味で、今回のCao Haoさんの作品は、共感を呼び、楽しく、そして美しく学べるきかっけになることと思う。
南極の白い世界が氷雪藻によって赤く染められる現状を目の当たりするというこの提案は、「自分たちが生きてく上で、いかにカーボンニュートラルを実現しなければならないか」ということをより実感させられると思い、この作品を選出した。
ピエトロ賞
e-CONTAINERS
小林 大悟
(新潟県立津南中等教育学校)
e-CONTAINERSは、単なるユニークなキッチン用品ではありません。カーボンニュートラルの実現に大きな役割を果たすクリーンエネルギーについて学ぶことができる家庭教育用製品なのです。カーボンニュートラルのためには、何をすればいいのでしょうか?知識や理解を深めるだけではダメなのでしょうか。そして、ただ学ぶだけでも面白くありません。特に子どもは、興味がないとすぐに飽きてしまいます。そこで登場するのが「食」です。ターゲットは主に子どものいる家庭です。食は私たちの生活に密接に関わっているからです。このアイデアは、食べ物に敬意を払い、楽しく学べることに焦点を当てています。米びつとタッパーという一般的に使用される2種類の容器を再設計し、運動エネルギーによるクリーンなエネルギーを蓄え、ソーラーパネルで発電します。さらに、これらの容器は自然に優しいバイオプラスチックで作られているのも特徴です。
- 講評
- 株式会社ピエトロ
SDGsプロジェクト
リーダー長坂 沙知子 様
自ら課題を見出して、SDGsの認知向上につながる取り組みを考えるという、若い世代の皆様を頼もしく思いながら、応募作を拝見した。
どの提案も興味深く、選定に悩んだ。その中でも、「おうちで楽しく、”食”を通してできるカーボンニュートラル 」をテーマとしたピエトロ賞として選出したのが、小林大悟さんの、"eコンテナー"。食を通じて楽しくカーボンニュートラルを学ぶことができる家庭用教育グッズの提案は小さなお子さまから大人まで、おうちにあるキッチングッズがカーボンニュートラルの実現につながる身近なライフスタイルデザインだと感じた。
九州みらい建設グループ賞
Bukit - Boutique Hotel
Chen Jia Yue
(University of Science Malaysia)
ブキッ・メルタジャムは、観光地でもなければ国の中枢でもなく、観光地であるペナン島に入る前に、人々が通り過ぎる町に過ぎない。しかし、他の有名なヘリテージタウンと同様に、地元の人々や外国人が発見した興味深い個性ある歴史が存在します。そのため、この眠ったようなヘリテージタウンには、次の世代や世界に向けて町の歴史を残すためにも、ブキッのようなランドマークが必要なのです。
ブキットの基本コンセプトは、マレーシアやペナンの本物の味や伝統を守り、それらをゲストと共有することです。ブティックホテルとして、ゲストには70年代のノスタルジックなペナンをテーマにした体験を、そして1階は、誰もが楽しめる完全なオープンエアとして提供されます。従来のホテルで使用されている壁やシースルーのガラスドアのような境界線がないため、階級や人種の差別なく、すべての人を温かく受け入れます。2階以上にはプライベートな空間を、地下にはセミパブリックな空間を設けています。1階全体が公園となっており、来訪者やゲストにさまざまなアクティビティを提供します。1階の緑の芝生の広場には、素敵な屋台や地元の職人が招かれ、ゲストが新鮮なオープンエアの中でお腹も心も満たすことができます。同時に、ホテルタワーの中央に位置する広場の丘でもフェスティバルが開催され、ゲストはホテルの部屋からすぐにパフォーマンスやショーを楽しむことができ、他のゲストとの会話も生まれます。
ブキットは、人工的なジャングルを提供し、地元の人々のレクリエーションの場となることを目指しています。また、マレーシア初の木材を使用した高層ビルとして、建設業界の二酸化炭素排出量を削減したいと考えています。
- 講評
- 九州みらい建設グループ
常務執行役員経営企画部長 兼
広報SDGS推進室長中村 美樹夫 様
国内外から多くの応募と斬新なアイデアをたくさん出していただき、社内の選考でも意見が分かれたが、最終的にBukit-BoutiqueHotelを選定した。
サステナブルな材料である木造の多層構造の建物を作ることによって、カーボンニュートラルを目指そうというアイデア。そして低層部では地域に開かれたオープンスペースを提供し、誰もが楽しめる空間を創出する。しかもそのうえで商業的な価値を生み出すというよう本提案のコンセプトは、九州みらい建設グループが考える方向性と最も合致するという意見に基づいて受賞作品とした。我々も、いつかBukit-BoutiqueHotelのような格好いい施設コミュニティをこの九州で作ることができたらと考える。
九州大学
ネガティブエミッション
テクノロジー賞
Carbon Capture Bus
Zhang Zexin
(Kyushu University)
国土交通省の「道路交通分野における地球温暖化対策に関する調査」によると、2013年の国内CO₂排出量に占める運輸部門の部門別CO₂排出量の割合は17.1%で、第2位となっており、運輸部門のCO₂排出量のうち、自動車からのCO₂排出量は約86.4%を占めています。こういったことから、道路空間からのCO₂排出総量を削減する必要があると考えています。
本提案では、公共交通機関のバスにDACシステムを搭載します。道路空間のCO₂は、走行中の空気の流れに乗ってDACシステムに入り、DACシステムに吸収されて液化、そしてそれらは車体に蓄積されていきます。静止状態では、回収された液体はリユース会社に回収され、CO₂リユース技術により燃料や製品などに生まれ変わります。同時に、公共交通機関の利用促進を支援することで、一般の自動車部門の道路空間のCO₂総排出量を削減します。つまりは、CO₂から変換された資源という形で、バスの利用者にその利益を還元するというものです。また、バスはDACシステムの稼働状況をリアルタイムに可視化したり、公共交通機関のチケットにカーボンラベルを表示することで、バス利用時に排出されたCO₂量の情報を利用者に提供します。人々の交通手段の意識ををより低炭素なものに変えることで、公共交通機関の利用を促すことを目的としています。
- 講評
- 審査員藤川 茂紀
この提案を選んだ理由は、大きく二つある。ひとつは、提案されたこのデザインアイデアが、小型であり、分散型のシステムであるということ。モバイル(移動する)タイプでCO2を回収できるという点は、私たちが開発している技術のアピールにもなり、カーボンニュートラル実現に向けて、非常に象徴的なアプローチと言える。特に福岡ではたくさんのバスが走行しており、大きな社会的インパクトを持つことになる。ただし、回収したCO2を積載したまま運行すれば、燃費減少になるため、その点は今後課題として検討を続けてほしいと思う。また、もうひとつの選考理由としては、バスチケットに、どれだけ二酸化炭素を排出しているかが表示されることです。人々はバスに乗車するたび、二酸化炭素排出削減量を確認できるため、利用者のCO2削減動機付けにもつながることから、本提案は、社会実装と意識改革の推進に繋がると考える。
高校生特別賞
Saving Lamp
Yuina KOMATSU,Shiho UEMURA,Fuka HIRATA, and Nanako GODA
(Fukusho High School)
ガスや電気の使用量を減らし、家庭内での支出を減らすことで、家庭からのCO2排出量を削減することを目的としています。ターゲットは子どものいる家庭です。子どもは無意識のうちに水を使いすぎてしまうことがあります。この公共サービスはすべてアプリと連動しており、家族が自分の消費量をモニターできるようになっています。このアプリでは、1年間の光熱費の消費量をグラフで表示し、前年と比較することで、節約へ意識を高めることができます。また、アプリを使って消費量を確認しなくても、水道の蛇口やガス機器のランプ表示を見れば、今月どれだけ使ったかが一目瞭然で、使用量をコントロールすることができます。そのため、たとえアプリを開いて確認するのが面倒でも、資源を節約することができるのです。
- 講評
- 審査員長池田 美奈子
課題解決には、まずスマホアプリという風潮が目立つなか、この提案は人が日常的に使っている物理的なモノ自体から情報を読み取れるようにしたところが良い。人と物の間にアプリを介在させるのではなく、人の行動の自然な流れのなかで、タイムリーに楽しくエネルギー使用量を知らせることで、ユーザーはより直感的に状況を把握し、自然に生活を見直すことができるだろう。造形的な面では改善の余地は多いが、生活実感を踏まえたアイデアの実現に向けて大いに期待する。
無秩序なスプロール化と都市開発が、自然と都市の共存を阻み、ひいては二酸化炭素の排出量を増加させているという俯瞰的な視点から都市構造のなかに自然を取り戻すための都市計画のフレームをデザインしている。ダッカの地形の特徴をうまく活用し、またその景観の本来の美しさにも着目し、カーボンニュートラルの問題を解決するだけでなく、都市の価値を高める魅力的なアイデアにまとめ上げた。さらに課題定義の的確さと詳細なリサーチに基づく提案はダイナミックで説得力がある。審査員の議論では、具体的なデザイン提案が示されていないとの意見もあったが、優れたデザインフレームとガイドラインの提案は、今後の具体的なデザインの基盤となることから、そのポジティブな影響力が金賞にふさわしいと評価した。